足回りとか駆動系まで一通り触ってきたし、今回はいよいよ「地面と戦ってる最後のパーツ」タイヤ編いくね。
WHEELSセクション=ホイールアングルとタイヤ空気圧をいじって路面に合わせてグリップを最適化する場所って扱いになってる。
1. タイヤセッティングは何をしてるのか
イメージで言うと、タイヤセッティングはこの3つを調整する感じ:
- どんなタイヤを履くか
- コンパウンド(SOFT / MEDIUM / HARD / WET)
- 路面(グラベル / ターマック)
- 空気圧(PRESSURE)
- 接地面の広さ
- 発熱しやすさ / オーバーヒートしづらさ
- タイヤの角度(CAMBER / TOE)
- コーナリング中のグリップの出方
- 直進安定性とクイックさのバランス
ざっくりいうと
「タイヤをどんなコンディションで使いたいか」を決めてあげる作業
って感じ。
2. タイヤコンパウンドの選び方
2-1. 基本:SOFT / MEDIUM / HARD / WET の役割
グラベルもターマックも
SOFT / MEDIUM / HARD の3段階+ターマック用の WET(RAIN) ってラインナップになってる。
ざっくり性格をまとめるとこんなイメージ:
- SOFT
- グリップ最強
- でも摩耗早い&オーバーヒートしやすい
- 短いステージ / 気温低め / テクニカル向き
- MEDIUM
- 何でも屋ポジション
- グリップも耐久も中間
- 複数ステージを同じタイヤで走るレグに向き
- HARD
- グリップは一番低い
- でも熱と摩耗に強いタフネス担当
- 長距離 / 高温 / 路面が荒くて削れやすい時
- WET (RAIN / ターマック用)
- 溝が深くて水をかき出すデザイン
- ウエット路面のグリップは神
- でも乾いてくると一気にオーバーヒート+減りまくり
2-2. グラベルの選び方の考え方
グラベル SOFT
- ルーズな砂利・小石多めの路面
- 気温低め or 朝イチのステージ
- SSの距離が短め(テクニカル多め)
グラベル MEDIUM
- 距離そこそこ・スピードレンジ高めが混じるレグ
- 同じタイヤで2〜3ステージこなす時にちょうどいいバランス
グラベル HARD
- すごいロングステージ
- 真昼の高温コンディション
- 路面が尖った石・硬い路盤でタイヤ削れそうな時
2-3. ターマックの選び方
ターマックも性格はほぼ同じ。
ターマック SOFT
- 路面温度低め〜普通
- タイトコーナー多め・ブレーキポイントも多いテクニカルステージ
- タイムアタック的に「一発の速さを狙いたい」時
ターマック MEDIUM
- レグの中で距離も速度域もバランスいい時
- 晴れだけどそんなに路面熱くない…くらいの条件
ターマック HARD
- 真夏・日中・長距離みたいなハードワーク
- 連続ステージでのトータルタイム重視
ターマック WET (RAIN)
- ステージが濡れてる / 雨予報が続くレグ
- ただし「ほぼドライだけど一部だけ濡れてる」みたいな時に履くと
→ ドライ区間で過熱&早く溶けて逆に遅くなるので注意
2-4. コンパウンド選びの実践ルール
迷ったらこの順で考えるといい感じ:
- レグ単位で見る
- 「次のサービスまでに何ステージ走るか?」
- ステージ距離と気温を見る
- 短距離&寒め → SOFT寄り
- 長距離&暑め → HARD寄り
- グリップ優先か、トータルタイム優先か決める
- アタックしてみたい時 → ワンランク柔らかい
- 安定して完走したい時 → 真ん中〜ちょい硬め
3. PRESSURE(タイヤ空気圧)の考え方
ここが「同じタイヤでも速く使えるかどうか」のキモ。
- 空気圧を上げると
- サイドウォール(タイヤ側面)がカチッと硬くなる
- タイヤがあまり潰れない → 発熱が減ってオーバーヒートしにくい
- でも接地面(コンタクトパッチ)が小さくなって、グリップは落ちやすい
- 空気圧を下げると
- タイヤがよく潰れる → 接地面が増えてグリップUP
- その代わり、転がり抵抗が増える
- タイヤがグニグニ動くので発熱しやすく、リムから外れるリスクも上がる
ポイントは
「グリップ最大」じゃなくて「タイヤを適温で長く使う」圧を探す
ってところ。
3-1. 実際にどう調整していくか
- まずはデフォルト圧で走る
- 1ステージしっかり走り切って、タイヤ温度とフィーリングをチェック
- タイヤがすぐ熱ダレするなら
- 空気圧を「少しだけ」上げる
- 1クリック〜2クリック上げて再度走ってみるイメージ
- 逆にずっと冷え気味でグリップ足りないなら
- ちょっとだけ圧を下げる
- 左右や前後のバランスを見る
- フロントが熱くてリアが冷えてる → フロントだけ少し上げる
- 逆ならリアだけ調整、みたいな感じで前後を分けて考える
4. CAMBER(キャンバー)でタイヤの「使い方」を決める
キャンバーは、車を正面から見たときのタイヤの「ハの字」具合ね。
- ネガティブキャンバー(上が内側)
- コーナリング中に外側タイヤの接地面が増えて、ピークグリップUP
- ステアリングのレスポンスも良くなる
- ただし
- つけすぎると直線で接地面が減る → ブレーキと加速が弱くなる
- 内側だけ熱くなって、タイヤが偏摩耗しやすい
目安は
内側と外側の温度差が 20℃を超えないくらいに抑える
ってやつ。
4-1. キャンバーの方向性
- グラベル
- ロール量も大きいし路面も荒いから、そこまで極端なネガティブは要らない
- ちょいネガティブで、外側をしっかり使いつつ、直線の安定も残すくらい
- ターマック
- ロールが小さくて路面フラット → ネガティブを少し多めに
- 特に高速コーナーが多いステージは、コーナリング中のグリップ優先が吉
5. TOE(トー)で「直進安定 vs クイックさ」を微調整
トーは車を真上から見たときのタイヤの向き。
- 内側向き → トーイン
- 外側向き → トーアウト
- フロント トーイン
- 直進安定性UP
- フロント トーアウト
- ターンイン(曲がり始め)がシャープになる
- ステアの応答がクイックになる
- リア トーイン
- コーナリング中の安定性UP(リアが踏ん張る)
- リア トーアウト
- 車の回頭性UP → オーバーステア方向に振れる
ラリー用セットアップの定番としてよく使われるのが、
フロント:わずかなトーアウト
リア:トーイン
って組み合わせ。
- フロントが素早く向き変えしてくれる
- リアはしっかり路面を掴んで、出ていきすぎない
この「ほんの少し」ってところが大事で、
いきなり極端な値に振らないでごく小さな値から試すのが安全。
6. 実践フロー
タイヤまわりを一気に全部いじるとワケわからなくなるから、こんな順番で触っていくと整理しやすいかな。
- コンパウンドを決める(路面・距離・気温ベース)
- レグ単位で見て SOFT / MEDIUM / HARD / WET を決める
- デフォルト圧で1ステージ走る
- タイヤ温度とフィーリングをチェック
- 「すぐタレるか」「最後までグリップ残るか」をメモる
- 空気圧だけでまず追い込む
- 1クリックずつ上下させつつ、温度の上がり方を見て調整
- ここで「適温で長く使える」状態を目指す
- その後、キャンバーをいじる
- 外側が全然使えてない → ちょいネガティブ増やす
- 内側ばっか熱い → ネガティブ少し戻す
- 温度差20℃以内を目安に
- 最後にトーで味付け
- 直線でフラつく → フロントのトーアウトを弱める or トーイン方向へ
- 曲がり始めがダルい → フロントをほんの少しだけトーアウト方向へ
- リアが出すぎる → リアのトーインをちょい増やす
「一度に1項目だけ変える」「変えたら必ず2〜3本走って確認」
ここを守ると、自分好みのタイヤセッティングがかなり見つけやすくなるはず。
7. まとめ:タイヤは「靴+靴ひも+足の向き」
タイヤセッティングってランニングシューズ選びにかなり近い感覚。
- コンパウンド選び → どんな路面・距離を走るかで靴そのものを選ぶ
- 空気圧 → 靴ひもの締め具合
- キャンバー&トー → 足のどこに荷重をかけるか
Assetto Corsa Rallyでタイヤをちゃんと合わせてあげると、
同じコースでも「クルマってこんなに曲がるの?」ってくらい挙動が変わるから、
ぜひここはじっくり触ってみてほしいところ。
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