アンチロールバー&実戦セットアップ編
第1回では
- 車高(アジャスターリング)
- スプリングの硬さ
で足回りの土台と性格を作って、
第2回では
- ダンパー(スロー/ファスト)
で荷重移動のスピードを整えるとこまでやった。
足回りセッティングラストの第3回は、
- アクスル&アンチロールバー(Anti-Roll Bar)
- 路面別のざっくり方向性
- 「セッティングが悪い?運転が悪い?」の切り分け方
ここをまとめて、実戦でどう使うかまで持ってく回。
1. アクスル画面とアンチロールバーの役割
- アクスルの剛性や減衰 → 左右のホイールがどれくらい「一緒に」動くか
- アンチロールバー → 同じ軸(フロント/リア)の左右ホイールをつないでロールを抑える棒
アンチロールバーは
ボディロールを減らして、タイヤの接地角度(キャンバー)をコントロールするパーツ
ただし、ロールを減らしすぎると
- 外側タイヤに一気に荷重が乗る
- 内側タイヤが軽くなりすぎる
っていうグリップ飽和が起きやすくなる。
逆にロールをあまり抑えないと、
- ロール量は増えるけど
- タイヤが路面をなぞる時間が長くなって、グリップがマイルドに出る
このバランスをいじるツマミがアンチロールバーって感じ。
2. アンチロールバーの基本:どこを硬くするとどう変わる?
アンチロールバーは、
- 硬くする → その軸のロールを減らす → その軸のタイヤに荷重を早く・強くかける
- 柔らかくする → その軸のロールを増やす → 荷重移動がゆっくり・マイルドになる
って覚えると分かりやすい。
で、この「どの軸を硬くするか」で、アンダー/オーバーの性格が決まってくる。
2-1. フロントロールバーを硬くすると
- ミッドコーナーでフロントのロールが減る
- 外側フロントに荷重がガツっと乗る
- フロントタイヤのグリップが早めに飽和しやすくなって
→ アンダーステア方向 に寄りやすい。
メリット:
- 高速コーナーでのロールが減って、ステアに対して車がシャキッと反応
- 「入りはそこそこ、真ん中で安定させたい」時に使える
デメリット:
- グラベルやスノーで硬くしすぎると、どこでも曲がらない車になりやすい
- ギャップで内輪が簡単に浮いて、トラクションを失いやすい
2-2. フロントロールバーを柔らかくすると
- ロール量が増えて、フロントタイヤが路面をなぞる時間が長くなる
- 外側フロントのグリップを使いやすくなって
→ ターンインで曲がりやすい方向 に振れる。
メリット:
- 低〜中速コーナーの入りが素直になる
- 荒れた路面でフロントの接地感が出やすい
デメリット:
- ロールが増えすぎると、ステアを切ってから車が反応するまでのラグが大きくなる
- ターマックの高速域だと「ヨッコラショ感」が出て怖い
2-3. リアロールバーを硬くすると
- リアのロールが減る
- 外側リアタイヤに荷重が一気に乗る
→ オーバーステア方向 に寄る。
メリット:
- 進入でリアがくるっと回ってくれる
- タイトコーナーが多いステージや、ヘアピンで車を向けたい時に使える
デメリット:
- ブレーキ+荷重移動が重なった時に、一気にケツが出るスナップオーバーが出やすい
- スノーや超低μ路だと、まじでスピン製造機になる
2-4. リアロールバーを柔らかくすると
- リアがよくロールして粘る
→ 安定方向&アンダー寄り。
メリット:
- 立ち上がりでリアが踏ん張ってくれて、トラクションが出やすい
- 高速コーナーの安定感が増す
デメリット:
- 曲げたい時にリアがついてきてくれなくて、「ただのアンダー車」になりやすい
3. スプリングとの関係:どっちでロールを止める?
ロール量そのものはスプリングとアンチロールバーの“分担戦争”
みたいなノリになる。
ざっくりの考え方:
- スプリング:縦方向の揺れ・ピッチ/ロール両方に効く土台
- アンチロールバー:主に横方向(ロール)専担当
だから、
- スプリングをかなり硬めにしてるなら、ロールバーは控えめ
- スプリングを柔らかめにしてストローク重視なら、ロールバーで最低限のロールを抑える
みたいな役割分担を意識しておくとセットが決めやすい。
特にラリーは、
- ストロークを使えないと一気にグリップを失う
ので、サス柔らかめ+ロールバーで軽く抑えるくらいが現実寄りな方向性になりやすい。
4. 路面別・アンチロールバーの方向性
第1・2回で触った車高・スプリング・ダンパーと合わせて、路面ごとにアンチロールバーのざっくり目安を出しておく。
4-1. 荒れたグラベル
- 車高:やや高め
- スプリング:柔らかめ
- ダンパー:ファスト系弱め寄り
- アンチロールバー:前後とも弱め〜中間
理由:
- 左右の足がある程度バラバラに動いてくれないと、タイヤが路面をなぞれない
- ロールをガチガチに抑えるより、とにかく接地時間を確保したほうが速い
4-2. フラット寄りのグラベル(高速ステージ)
- 車高:中くらい
- スプリング:中間〜やや硬め
- ダンパー:スロー系で姿勢を落ち着かせつつ、ファストはほどほど
- アンチロールバー:フロント中間、リアやや弱めくらいからスタート
狙い:
- 高速域でフラフラしないようにフロントはそこそこ抑える
- でもリアは少しロールさせて、ゆるくオーバー寄りの性格をキープ
4-3. ターマック(舗装)
- 車高:低め
- スプリング:硬め
- ダンパー:全体に強め寄り(ただし跳ねすぎ注意)
- アンチロールバー:前後とも中〜やや強め
ポイント:
- グリップが高いぶん、ロール量を抑えないとステアのレスポンスがボヤける
- ただし、縁石がデカいコースやジャンプがあるステージでは、やりすぎると一気にグリップを失うので注意
4-4. スノー・アイス系
- 車高:中〜やや高め
- スプリング:柔らかめ
- ダンパー:スローを弱めて、急激な荷重移動を殺す方向
- アンチロールバー:かなり弱め寄り
理由:
- とにかくグリップが低いので、「すばやく荷重を動かす」のはほぼ自殺行為
- ロールをがっつり抑えると、外側タイヤだけすぐ飽和して何もできない車になる
5. 実戦でのセットアップ手順(足回り総まとめ)
3回分の内容をまとめて、「じゃあ実際どうやって組むの?」ってフローにするとこんな感じ。
5-1. ステップ1:タイヤと路面を決める
まずは
- 路面(グラベル/ターマック/スノー…)
- コンディション(ドライ/ウェット)
に合わせてタイヤを選ぶ。ここが外れてたら、どんなセッティングでも意味ない。
5-2. ステップ2:車高とスプリングで“土台”を作る
第1回の内容:
- 路面の荒れ具合を見て、車高レンジを決める
- その車高で底付きしない程度のスプリングを入れる
- 前後バランスで、ざっくり アンダー/オーバー方向 を決める
5-3. ステップ3:ダンパーで荷重移動のスピード調整
第2回の内容:
- スローバンプ/リバウンドで、ブレーキ〜旋回〜立ち上がりの挙動を整える
- ファストバンプ/リバウンドで、ギャップとジャンプに合わせる
片側・1項目・1〜2クリックずつ動かすルールは死守。
5-4. ステップ4:アンチロールバーで前後グリップの最終調整
ここで、
- 「高速コーナーでアンダー気味」→ フロントバーを少し弱める or リアを少し強める
- 「タイトでケツが出すぎる」→ リアバーを少し弱める
みたいに、ロール量と前後グリップのバランスを微調整する。
6. 「セッティングが悪い?運転が悪い?」の切り分け方
6-1. 足回りセッティングを外してそうな症状
例えばこんな挙動は、足回り(特にスプリング/ダンパー/ロールバー)を疑っていいやつ。
- どのコーナーでも一律でアンダー/オーバーが強い
- ブレーキを踏んだ瞬間から、ずっと車が落ち着かない
- 荒れた路面で、毎回同じ場所・同じようなギャップで必ず跳ねる
- 高速コーナー全部で怖い(低速は意外と平気)
こういう「条件が揃うと必ず出る挙動」は、セッティングが悪さをしてる。
6-2. ドライビング側が怪しいパターン
逆に、こんな感じだとドライバー側の可能性が高い。
- 同じコーナーでも、周回ごと(ラリーなら走行ごと)に挙動がバラバラ
- ブレーキポイントが毎回ズレてる
- 進入で減速が足りてないのに「曲がらない」と感じてる
- アクセルを開け始めるタイミングが早すぎて、毎回出口で膨らむ
このへんは、セッティングでいじる前に
- ゴースト or リプレイで、自分の入力タイミングをチェック
- 「9割ペース」で同じステージを5本くらい走って、タイムのバラつきを見る
のが効く。
6-3. タイムのブレと見方の目安
- 短めステージ(2〜3分)をミスなし・9割ペースで5本くらい
- タイム差がだいたい ±0.5〜1秒以内に収まってるなら、運転はかなり安定してる
- それでも「このタイプのコーナーだけ毎回遅い/怖い」があるなら、そこはセッティングで助けられるゾーン
逆に、毎回ミス場所がバラバラなら、まずは運転とライン取りの見直しからのほうが伸びしろデカい。
7. まとめ:足回りは“性格づけ+微調整”で考える
3回分まとめると、足回りセッティングはこんな感じで捉えるとやりやすい:
- 車高+スプリング:土台&大まかな性格(アンダー/オーバー、ストローク量)
- ダンパー:荷重移動のスピードと滑り出し方
- アンチロールバー:ロール量と前後グリップ配分の微調整
で、
- 路面を見て“ざっくり方向性”を決める
- ベースセットを作る
- 気になる挙動が出たら、その挙動に対応するツマミだけを順番に少しずつ触る
- タイムのブレとリプレイで、「セッティング vs ドライビング」を切り分ける
この流れを守れば、Assetto Corsa Rallyでも
「なんかよく分からんけど、とりあえずいじった」
から卒業して、狙って性格変えられる“メカニック目線ドライバー”になれるはず。
あとは君の好みの挙動に合わせて、
- もっとケツ振りたいラリースタイル
- とにかく安定重視で“線をなぞる”スタイル
どっち寄りでも作り分けできるから、ぜひベースセット作ってみて。
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