ブレーキ編で「止まる・曲がるの土台」やったから、今回はその外側で支えてくれる電子制御いくよ。
ABS / TCS / THROTTLE MAP / ENGINE MAP、この4つが今日の主役。
ラリーって路面グリップがコロコロ変わるから、電子制御の使い方しだいで
- 「スピンマシーン」
- 「安定してそこそこ速いマシン」
どっちにも化ける。
しかも、Assetto Corsa Rallyだと数値いじるだけで性格がガラッと変わるから、ここ理解してるかどうかの差デカい。
1. この回でやること:電子制御で“安全ネット”を張る
今回のゴールを先にまとめると:
- ABS が 何をやってるか をイメージで理解する
- 「ABS値を上げる・下げる」とゲーム上で何が変わるかを言葉にできるようにする
- TCS / THROTTLE MAP / ENGINE MAP が
- どう役割分担してるか
- ブレーキフィールや立ち上がりにどう影響するか
をざっくり掴む
- 自分のレベル別・路面別に
- 「まずはこの方向に振っとくと安定」
っていうベースセットを持つ
- 「まずはこの方向に振っとくと安定」
機械式ブレーキ(マスター径とかバランスとか)は前回やったから、
今回は電子がどう手助けしてくれるかに絞っていく。
2. ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)をちゃんと理解する
2-1. 中身のイメージ:1秒間に何十〜何百回「踏み直してくれる子」
ABSはざっくり言うと
「ロックしそうになったタイヤのブレーキ圧を、一瞬だけ抜いて、またかけ直す」
っていう動きをめちゃくちゃ高速で繰り返してるシステム。
- 各タイヤに付いてる車輪速センサーが
「あ、こいつだけ急に回転落ちた、ロックしそうだな」って検知 - ECU(コンピュータ)が
→ そのタイヤのブレーキ圧を一瞬抜く
→ 回り出したらまた圧をかける - これを1秒間に何十〜何百回レベルでやってる
人間がペダルで「カカカカカッ」ってポンピングするより、
はるかに早く・正確に圧を調整してくれてる感じ。
OFFのときは、もちろんこの補助がゼロ。
ブレーキ圧のコントロールは全部ドライバーの足次第になる。
2-2. 「ABS値を上げる」とゲーム的にどう変わるか
Assetto Corsa Rallyのセッティング画面だと、車種によって違うけど
だいたい数値スライダーでABSのレベルを変えられるはず。
イメージはこんな感じ:
- 値を上げる
- ロックに対して敏感になる
- 「ちょっとロックしそう?」くらいで早めに介入
- ペダル雑に踏んでも、とりあえずタイヤはロックしにくい
- 値を下げる
- ロックするギリギリまで我慢してくれる
- 上手く踏めれば制動力をギリギリまで引き出せる
- ただし踏み方が雑だと、簡単にロック→滑走
で、メリット・デメリットはこんな感じ。
メリット(値高め)
- パニックブレーキでもタイヤがロックしにくい
- 横滑りからのスピンを抑えやすい
- ブレーキ中でもハンドルが効きやすくて、操作の猶予が増える
デメリット(値高め)
- 腕がある人にとっては
→ ほんの少しだけ制動距離が伸びることがある
(ABSが先にビビって圧を抜いちゃうイメージ) - グラベルや雪みたいな路面だと
→ 「ずっとガクガク言ってて、前に転がっていかない」
→ =介入がうるさいって感じやすい
ABS OFFにすると、ロックさせたくないなら自分でペダルを微調整するしかない。
完全に「上級者向けモード」だね。
2-3. 路面別:ターマック/グラベル/雪・ウェットのABSざっくり目安
数値そのものは車とMOD次第だから、方向性だけまとめるね。
■ ターマック(舗装)
- グリップが高いから、ロック領域も狭い
- ABS:中〜やや高めが無難
- 初級〜中級なら「ちょい高め寄り」
- 上級なら少しずつ下げて、踏み方で詰める
舗装は「タイム最優先」になりやすいから、
慣れてきたらABS弱めで自分でギリギリを攻める遊び方もアリ。
■ グラベル(砂利)・ダート
- タイヤが簡単にロックしちゃう路面
- ロックしたまま滑ってると、逆に止まらないこともある
- ただ、ABSが強すぎると
→ ずっと介入してて、前に出ていかない感が出やすい
ここはバランス勝負で:
- 初心者〜中級:
→ ターマックより少し低めのABS(介入弱め)にして
→ 自分でもペダルを“抜く”意識を持つ - 上級:
→ ステージによってはABSかなり弱めかOFFまで視野
■ 雪・ウェット
- 超低μ路面。ロックしやすいし、ロックしたらマジで止まらない
- でもABSが強すぎると、「いつまでも滑ってるだけ」感も出やすい
おすすめは:
- 初心者:ABS高め
→ とにかくスピンしない・止まる方を優先 - 中級以上:
→ 「ちょっとABSうるさいな」と感じ始めたら
少しずつ数値を下げて、自分の踏み方も合わせて調整
2-4. ドライバーのレベル別おすすめABS
ざっくりこんな指針でOK。
- 初心者
- ABS:結構高め
- 目的:まず「毎回ちゃんと止まれる」「スピンしない」こと
- この段階では、制動距離より安定したリズムが大事
- 中級
- ABS:デフォルトから少しずつ下げていく
- コーナーごとのブレーキポイントが安定してきたら
→ 「もうちょい踏めるな」と感じる範囲で弱めてみる
- 上級
- ステージとマシンで
- ABS強め:夜/雨/視界悪いときの保険
- ABS弱め〜OFF:タイム狙いのドライ路
- 「このセクションは怖いからABS強め」「ここは攻めるから弱め」
みたいに、使い分ける感覚までいけると一人前。
- ステージとマシンで
3. TCS・スロットルマップ・エンジンマップとブレーキの関係
ここからがMap系の本題。
ブレーキペダルに直接付いてるわけじゃないけど、
姿勢変化・トラクション・エンジンブレーキを通して
ブレーキフィールにガッツリ絡んでくるメンツ。
3-1. TCS(トラクションコントロール)の役割と、ABSとの噛み合い
TCSがやってること
TCSは加速中の「空転しすぎ」を止める係。
- 駆動輪が急に回転上がったのを検知すると
- エンジン出力を下げる(点火カット・スロットル絞るイメージ)
- or 必要に応じてブレーキを軽く噛ませる
- 特に
- 雨
- 雪
- 超ツルツルのグラベル
みたいな時に、一気に空転→横に飛んでいくのを防いでくれる
強くするとどうなるか
- 強度高め
- ちょっとでもホイールスピンしそうになるとすぐ介入
- アクセル雑でも、車はそれなりに前に進んでくれる
- ただし、加速が“もっさり”しやすい
- 強度低め or OFF
- 加速は鋭くなる
- その代わり、アクセルワークヘタだと一気にホイルスピン&向き変わる
TCSとABSが一緒に働くとどう感じるか
- 進入:ABSがロック防止
- 立ち上がり:TCSが空転防止
どっちも介入強めだと、ドライバーからすると
「全部電子制御に止められてる感じ」「クルマが全然自由に動かない」
って印象になりやすい。
初心者〜中級のうちはあえて“過保護”気味でOKなんだけど、
タイムを詰めたいならどこかで
「ABS / TCSを少しずつ弱めて、自分の操作で稼ぐゾーンを増やしていく」
ってフェーズに入ってくる。
3-2. TCSのざっくり推奨ライン
- 初心者
- TCS:強め
- 特にFR / MR車は立ち上がりでケツがすっ飛んで行きがちなので、
最初は電子にだいぶ助けてもらった方がいい
- 中級
- TCS:中くらい〜やや弱め
- 「真っ直ぐ加速してる時は介入ほぼないけど、雑に踏むと助けてくれる」くらいを狙う
- ステージのグリップで1〜2段階いじるイメージ
- 上級
- グリップ高いターマック:弱め or OFFも視野
- グラベル・雪:ミスのリスクとタイムのバランス見ながら微調整
4. THROTTLE MAP(スロットルマップ)とブレーキングのつながり
4-1. 何をしているのか
スロットルマップは
「ペダルの踏み込み量」と「エンジンがどれだけ反応するか」
をつないでるカーブみたいなもの。
- 敏感なマップ
- ちょっと踏んだだけで、スロットル開度がグイッと増える
- ピリッとしたレスポンスで、アグレッシブな走り向き
- 穏やかなマップ
- 同じペダル量でもスロットル開度は控えめ
- じわ〜っとパワーが出るので、スピンしにくい
4-2. なんでブレーキと関係あるの?
コーナーひとつ取ると、実際の操作は
- アクセルオフ
- ブレーキで減速
- クリップに向けてブレーキリリース
- アクセルオンで立ち上がり
って流れになってる。
このとき
- アクセルオフの瞬間のエンジンブレーキ感
- ブレーキ離してアクセル踏み始めたときの“ドンッ”とくるトルク
を決めてるのがスロットルマップ。
- 敏感マップだと
- ブレーキからアクセルに乗せ替えた瞬間にトルクがガツン
- 荷重移動が急で、姿勢が乱れやすい
- 穏やかマップだと
- 立ち上がりがマイルド
- ロールやピッチの変化が緩くて、車の挙動が読みやすい
= ブレーキを離してからアクセルに乗せる“橋渡しのスムーズさ”を作るパラメータってイメージ。
4-3. スロットルマップの使い分け
- ターマックでアタックしたいとき
- 反応が遅いと「もたつく」ので
→ やや敏感寄りをチョイス - ただし自分の右足が追いつかないと、立ち上がりでスピン祭りになるから注意
- 反応が遅いと「もたつく」ので
- グラベル・雪・ウェット
- グリップ低いので、敏感マップだとすぐホイルスピン
- 基本は穏やかなマップからスタート
- 慣れてきたら、ちょっとだけ敏感側に振ってタイムを狙う
- 初心者全般
- どの路面でも最初は穏やかマップ推奨
- まずは「アクセルオンで車が暴れない安心感」を作ってから、徐々に刺激を増やすのが吉
5. ENGINE MAP(エンジンマップ)とエンジンブレーキ感
5-1. 何を変えているのか
エンジンマップは
「どの回転数で、どれくらいトルクを出すか」
を変える設定。
- 低いマップ番号
- 低回転からガツンとトルクを出す
- 滑らかな路面での立ち上がりが鋭い
- 高いマップ番号
- 高回転寄りにパワーを寄せるイメージ
- 低回転では穏やかで、トルクの立ち上がりがマイルド
- 緩い路面でのスムーズなパワーデリバリーに向く
5-2. エンジンブレーキとの関係
エンジンマップを変えると、
アクセルオフしたときの減速感(エンブレ)も、体感として変わる。
- 低いマップ(低回転トルク太め)
- アクセル抜いた瞬間から「グッ」と減速しやすい
- ブレーキと合わせると、減速Gが強くて車の頭が入りやすい
- ただしリアの荷重が抜けすぎると、不安定になりやすい
- 高いマップ(高回転でパワー出す)
- 低回転域のエンブレ感が少しマイルド
- 減速が穏やかで、挙動がゆっくり変わる
- グラベルや雪での「いきなりケツが出る」のを抑えやすい
ここがブレーキとのコンボポイント。
- 「ブレーキはそんなに強く踏んでないのに、進入でリアがすぐ出る」
→ エンジンマップがロー側すぎて、エンブレ強すぎかも - 「ぜんぜん頭入らない、止まってくれない」
→ ロー側マップにしてみると、ちょっと楽になることもある
5-3. ENGINE MAPの路面別・レベル別ざっくり指針
- ターマックで攻めたいとき
- 低めのマップで、低回転トルク重視
- 強めのエンブレ+ブレーキでガツンと減速して、
早めに向きを変えて立ち上がり勝負、みたいな走りに合う
- グラベル・雪
- いきなりトルクがドンと出ると一瞬でホイルスピン
- 基本は高めマップで
スムーズなパワーデリバリー重視
- 初心者
- とりあえず中〜高めのマップからスタート
- 「この車、立ち上がりで全然パワー出ないな」と思い始めたら
ちょっとずつ低め側を試していく感じ
6. 電子制御をどう詰めるか:おすすめ手順
最後に、実際にAssetto Corsa Rallyでセッティング触る時の流れをまとめておくね。
手順1:まずは“過保護セット”で基準作り
- ABS:やや高め
- TCS:高め
- THROTTLE MAP:穏やか
- ENGINE MAP:中〜やや高め(緩い路面も想定)
この状態で、同じステージを何本か走って
- ベストから±0.5〜1.0秒くらいの範囲にラップが収まるか
- 変なスピンやクラッシュが減ってきたか
を基準に、まず「安定して走れる自分の土台」を作る。
手順2:ABSとTCSを少しずつ弱めてみる
- いきなり大きく変えないで、1〜2クリックずつ(ゲーム内の刻みに合わせて)
- 変えたら、必ず同じステージを何本か走ってフィーリング確認
- ねらい:
- 介入が減って、
→ ブレーキングと立ち上がりで「自分が操作してる感」が増えるか - 逆にスピンが増えてるなら、戻す勇気も持つ
- 介入が減って、
手順3:スロットルマップで“乗り心地”を合わせる
ABS / TCSの大枠が決まってきたら、
- 「立ち上がりで車が暴れがち」なら
→ THROTTLE MAPを穏やか側へ - 「もっとレスポンス欲しい!」なら
→ 少しだけ敏感寄りに振ってみる
ここはもう、ほぼ好みと操作の癖の世界。
自分が一番リズム取りやすいポイントを探す。
手順4:ENGINE MAPで“エンブレ+加速”を微調整
最後に、ENGINE MAPで
- 進入のエンジンブレーキの強さ
- 立ち上がりのトルクの出方
を好みに寄せる。
- 進入でフロントが入りにくい
→ 低めマップでエンブレ強め - 立ち上がりでホイルスピン多すぎ
→ 高めマップでトルクの立ち上がりをマイルドに
7. まとめ:電子制御は“タイムを削る前の安全ネット”
今回のポイントをざっくりまとめると:
- ABS
- ロック防止で「止まる・向き変える」の安定担当
- 値高め=安全寄り、低め=タイム寄り
- TCS
- 立ち上がりでのホイルスピン抑制担当
- 強め=誰でもそこそこ前に進む
- 弱め〜OFF=速いけど難しい
- THROTTLE MAP
- アクセルのレスポンスカーブ
- ブレーキからアクセルへの“橋渡しのスムーズさ”を決める
- ENGINE MAP
- トルクの出方とエンブレ感を調整
- ターマック=低めでガツン、緩い路面=高めでスムーズが基本
電子制御は、どれも「車の安全ネット」。
最初は強めに張っておいて、走りに慣れてきたら
「ちょっとずつネットを緩めて、自分の腕で稼げるゾーンを増やしていく」
こういう感覚で触ると、セッティングの迷子になりにくい。
次に他の項目いじるときも、
- ブレーキ:前回のメカ編
- 電子制御:今回のABS/TCS/Map
この2つをちゃんと押さえておくと、
足まわり・駆動系・タイヤを動かしたときの“挙動の意味”も、だいぶ読みやすくなるはず。
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